ナナメ横から世間を眺める。

ニュースを取り上げてみたり、たまに多数意見に抗ってみたり。

東京メトロのこと。

どうも、ジヤッキー天野です。

風呂敷は拡げるより畳むほうが難しいと痛感する毎日です。

 

さて、昨日3月3日は東京マラソンの日で、朝からテレビ中継をダラダラ見ていた。

大会は「東京メトロスペシャル」と銘打たれており、石原さとみさんのCMがジャンスカ流れていた。

これ、凄っげえ金かかってんだろうな…とボンヤリ考えていたところ、妻がこう言った。

 

「地下鉄なんて、コマーシャルやる意味あるのかしら?」

 

確かになあ。一部路線でJRや私鉄と競合するからとか?バスや自家用車から客を獲るとか?
いやあ、乗る人は乗るよね。

 

都内の移動は実は地下鉄が超便利ですよ、というアピール?うーん、いまは行き先はスマホで検索する時代だから自動で乗車案内が出てくるし。

 

で、いろいろ考えて、こう結論づけた。

 

きっと「イメージを上げておくこと」が大事なんだろう、と。

 

鉄道のように社会インフラを担う企業は「普通で当たり前」なところがあって、ちょっと何かあろうものならやれ止まった遅れた混んでるなんとかしろいい加減にせい、と責められる。

ので、普段からイメージの維持向上に努めておくことが、苦情対応コストの抑制を含む諸業務の負荷軽減に相応の意味があるのではないか。

みたいな話を、妻にした。

「そんなものかしらね」と妻は呟いて、洗濯物を干しに去って行った。

 

夜にこれまたボンヤリ見ていたテレビで、千葉市だったかのとある銭湯で、壁の絵を陸前高田の「奇跡の一本松」に描き換えたところたまたまご出身の方がいらっしゃって、たいそう感激されたというエピソードをやっていた。

 

そっかあ、陸前高田かあ。

震災だなあ。

もうすぐ平成も終わるけど、その30年ちょいに阪神大震災東日本大震災が両方あったんだもんなあ、すごい時代だよなあ…などと振り返りつつ、ふと8年前の日を思い出した。

 

私は千葉の船橋に住んでいる。関東在住と東北在住、また同じ千葉県民でも津波液状化のあった地区の方々とは勿論比べるべくもないのだが、それはそれでそれなりの大変さはあった。

 

当時の勤務地は、東京の丸の内。

早々に、JRが止まった。

さあ、帰れない。

 

今でこそ東京勤めの人は次に大災害が来たら無理して帰るべからず、しばらくは東京にとどまるべしというコンセンサスが出来たが、なにしろそこは当時のことだ(というか、そのコンセンサスが震災の教訓から生まれたものだ)。

家に妻も子もいる。いかにして帰るか。

タクシーなど捕まる筈もない。とりあえず歩くだけ歩こう、と七時過ぎにあてもなくオフィスを出たはいいものの、30分も歩いたところで早速挫折した。たまたま見つけた喫茶店に入り、会社に引き返すべきか否か葛藤しつつ、ネットがつながる会社貸与のノートパソコンと、ガラケーワンセグ(!)で情報収集にあたった。

 

しばらくして、一報が入った。

 

東京メトロは、まもなく一部路線で、運転を再開する見込みです」

 

何だと。このような未曾有の大混乱時に、動かす、だと。

凄いじゃないか、東京メトロ
強いぞ、東京メトロ

 

いや待て。東京メトロは、基本は東京都民の足だ。千葉住まいには…、あ。あるじゃないか、東西線が。西船橋まで、行けるじゃないか。

頼む、動いてくれ東西線

 

待つことしばし、刻々と流れるニュースに混じって次なる知らせが。

東西線は現在運転を見合わせておりますが、安全の確認が取れ次第、運転を再開する見通しです」

 

結局その安全確認にはかなりの時間を要したものの、果たして運転は再開された。

とりあえず東陽町までとか紆余曲折があったように記憶しているが、結局隣の市川市の行徳まで辿り着くことができ(流石に終点の西船橋までは走らなかった)、そこから3時間歩いて家に着いた。夜の3時近かったが、妻も子もまだ起きていた。人生で一番安心した場面を述べよと言われたら、今日に至ってもあの瞬間を挙げるかもしれない。

 

当時のJRを責めるつもりは、毛頭ない。
社内規定もあるだろうし、きわめて複雑怪奇な運行体系がひとたび分断されると収拾がつかなくなるであろうことは、素人にも想像がつく。

 

次に何かが起こったときに、同じことを東京メトロに期待するつもりも、毛頭ない。

あの日以来、世の中の「安全」に対するプレッシャーは格段に上がったし、先の震災を上回る規模のものがやってこないとも限らない。職場で大人しくしているのが吉だ。

 

ただ言いたいことは、あの日の東京メトロへの、感謝だ。

 

「運行再開」の知らせに、どれほどの希望を見出したか。

ホームに滑り込んでくる電車を見て、どれほど嬉しかったか。

黙々と働く駅員さん達を見て、どれほどの勇気をもらったか。

 

いまもって、感謝しかない。

 

かくいう私も普段は来るのおっそいなー、このぐらいで止まんなよー、とブー垂れているクチである。たまには、当たり前のことを当たり前にやる難しさ、そして当たり前のことを当たり前にやろうとしている人達の凄さや大変さに、思いを馳せねばなるまいな。ちゃんとしよう。なーんてことを考えた一日の話であった。

 

いろんな人の夢とか現実とか、ワクワクとかガッカリとかアワワとか、ぜーんぶひっくるめて、電車は走る。どうかこれからも、頑張って下さい。

 

(付記)
この原稿を途中まで、東京メトロ丸の内線の車中で書いている。ラッキーにも、新型車両がやってきた。ほう、2000系か。

いいじゃないか。とても、カッコいい。