「笠松競馬の教育担当者」を全面的に支持したい話。
どうも、ジヤッキー天野です。
先日電車で「桜なんてトットと散っちまえ、ガーッハッハ」と会話してる人がいました。病んでますね。
さて、なかなかグッとくるニュースの話。
笠松競馬で、入社前の新人がツイッターで色々呟いたところ研修担当者から公開説教された、そうな。
ニュースによるとこの研修担当者には賛否両論、一部炎上しかかっているとのこと。
あのね、何でもかんでも炎上させりゃいいってもんじゃないよ。
断言する。この研修担当者は100%正しい。
いや、一億二千三百万パーセント、正しい。
どこから説明したものか。
じゃあ、まず。これから社会に入る人、あるいはバイトを始めようという人は、就く仕事の特性というものをよく考えておいたほうがよい。
どの業界にも、「ならでは」とか「そこだけは譲れない」というものがある。それが分からない人は、その仕事に就いてはならない。
流行のバカバイトで言えば、例えば夜誰もいない衣料品売場で「わーいよりどりみどりだあーい」とファッションショーをやったバカがいたとして、まあそれも大概バカだが、食い物屋でバカやるのはそれとは全然レベルが違うってことだ。
食い物は、下手を打つと命にかかわるんだ。
あるいは、普通の事務所でボールペン1本コッソリ頂戴しても(悪いことだが)さほどおおごとにはならないだろうが、小売業で売り物のボールペン1本くすねたら、即解雇でも文句は言えない。どんなに安かろうと。どんなに偉かろうと。厳しいと思われるだろうが、そんなもんだ。
だって、小売業の中にいる人が売り物に手を出したら、小売業が成り立たなくなるんだ。
そこんとこをまず、よーく考えるべきです。
で、本件。笠松競馬は公営競技、いわゆるギャンブルだ。
この業界における譲れない点とは何か。
ギャンブルには、金が絡む。
金が絡むと人は豹変する。
そして、荒れる。
悪の道に堕ちる者もいる。
さよう、公営競技における最大の天敵は「不公正」、ひらたく言えば「八百長」である。
公営競技に従事する者は、公正な競技の成立にとことんナーバスだ。絶対におかしなことが起こらないよう、さらには絶対に疑われないよう、それはそれはエグいほどに、徹底的に注意を払う。
なぜなら、負けた連中が「いまの八百長だろ!」なんつって暴動を起こしてはたまらんのである。そう、ギャンブルは常に負ける人の数≧勝つ人の数なのである。
(暴動なんてそんなハナシまさか…とお思いの方、是非「浦和競馬 暴動」とか「園田焼き討ち事件」とかでググってみてください。)
さらに言えば今般の指導は、本人の身を守るためでもある。
繰り返すが金が絡むと、人は怖い。昨今の公営競技は随分クリーンになったが、それでも色々な人はいる。
夜な夜な帰りすがらに半分ラリった人から、
「よおニイちゃん、競馬場の人だろ?今日オイラが一文無しになったのはテメエらのせいだよお、有り金全部ココにおいて腹切れよお」
だの、
「アンタ、競馬場の人だろ?明日の3R何がくるか教えろよお。何、分からない?だったらテメエで本命馬に毒盛ってこいや。ホラよお」
だの絡まれないとも限らない。氏素性は軽々しく明かさないのが吉だ(ましてこれから相応の立場になることを期待されているはずだ、馬券売りのパートさんとは訳が違う)。
あとついでに言うと、人も怖いが馬も怖い。緩んだ気持ちで馬場に立ってたら、蹴られて死ぬぞ。…という戒めも、これまた大事かもしれない。
ここまでは、なんとなく共感頂ける方もいるだろう。いっぽう別の論点として本件は、ツイッター上の公開説教であった点が問題となっているようだ。Yahoo!ニュースのオーサーさんも「裏で対面で指導すべきだった」という趣旨のことを書いている。
一般論としては正しかろう。褒めるは皆の前で、叱るは裏でというのはマネジメントの教科書にもよく出てくる。
が本件に限っては、私はこの研修担当者を断固支持する。
内定者がツイッターでつぶやいた、あとでコッソリ叱られた、ではハタから見て「情報が非対称」なのである。第三者には裏の話など知りようがない。
それでは、公正を絶対とする公営競技にとって、シメシがつかんのである。
大衆が認知可能なように敢えて大仰にやりとりするのが組織にとっての唯一最善の防衛策であったと、私はこの研修担当者を高く評価したい。
そう、しつこいようだがこれは凡百の会社で起こっていることではない、公営競技の話なのだ。
さて、件の若者は今頃事の大きさに恐れおののき、震えているかもしれない。
大丈夫だ、若者よ。まだ救いの道はある。
何より、頭冷やして4月に来い、と言われているのだ。
この件、下手すれば内定取消しでもおかしくない案件との見方も、できなくはない。レベル的には、「**県警に引っ掛かりましたー。しばらく大人しくしてますが半年たったら拳銃下げて職務質問しまくるぞー」と呟く人にどうして街の治安を任せられようか、ぐらいの話と同等である。
上の「情報の非対称」に照らしていえば、一番シビアにやろうと思えば、
【謹告 SNSの不適切利用の件につき、当該内定者の内定を取消しましたのでお知らせします。今後とも安心してお楽しみください】
のニュースリリース1枚で済ませようとすることも、できるといえばできる(その場合、経済的な実害が発生していない中での内定取消しの是非という別論点は発生するが、その話はここでは於く)。
それをせず、なお教育をもってなんとかしようとしているということは、笠松競馬には愛があるということだ。パワハラ?逆だね、それは。
まずはツィッターから別アカ含め一切の痕跡を消し(あ、消すなと言われてるんだっけ)、あらゆるSNSとしばらく距離を置き、そして4月1日には全力で詫びを入れることだ。
そして、3年はガムシャラに頑張ること、そして認められることが自らを救うと申し上げたい。
なぜか。思うに本件は、笠松競馬、いや全国の公営競技…中央競馬、地方競馬、競輪、競艇、オートレース…で、「SNSの利用に関する不適切事例の教材」として広く扱われていくことになるだろう。その度に若者は、肩身も狭く、いたたまれない思いになるだろう。ただ3年も経てば、そしてそのときに相応の信頼を周囲から獲得できていれば、「あの時自分は若かった」と笑い話にもできるはずだ、きっと。そしてそれが何故いけなかったのかを、さらに若い後輩達に指導できるはずだ、圧倒的な説得力をもって。
若者よ、夜道ばかりではない。頑張ろう。
あといささか妄想含みで若者の肩を持つとすれば、この人は本当に心の底から競馬が好きで(そうじゃなきゃそもそも入職しようとしないはずで)、マイナーで財政的にも苦しい地方競馬に親しみを持ってもらえればという思いが、もしかすると根底にあったのかもしれない。だとすれば、いささかは心情を汲み取るにやぶさかでない。
ただ、手段を間違えては、パーだ。
若者には頑張って一通りの仕事を覚えて偉くなってもらって、ぜひ「笠松競馬の中の人」として、オフィシャルに呟く人になっていただきたい。
そして願わくば、「攻めた中の人」になっていただきたい。
公営競技の性格ゆえ、内容的にあまりにカカッたり斜行したりすると審議になるかもしれないが、競走中止にならないギリギリのところで折り合いを付けられれば、きっとビクトリーロードが見えてくるだろう。
で、いつの日か、「なんか最近の笠松競馬場のツイッターってヨソより断トツに面白いよねー」とか、あるいは「最近の笠松競馬のツイッター、どマニアックでタマらんな。これよこれ、ワシゃこういうのを待っとったんじゃ」みたいな声がチラホラ聞こえてきて、ああもしやあの時の若者が…などと想像する日がきたら、幸せだろうなあ…。なーんて、ボンヤリと思ったりするのである。